幸せになれない星の住人 12−1

幸せになれない星の住人

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12−1


 夜道を走った。住宅街を走りまわった。闇に染まるアスファルトは固くて、幾度も地を蹴った足がきしむ。それでも走った。あたりを見回しながら、走った。
 だけど、見つからない。どれだけ走っても、見つからない。
 黒いから。
 闇にまぎれて見つからないだけだよね? きっと、どこかにちゃんといる。
 街灯の下、塀の上、くまなく目を向ける。ひたすら探す――
「あっ」
 その時、目の前の電柱の陰になにかが駆け込んだ。
 私は全速力で、そこまで走る。なにかが動く。その姿が見える。
 猫。
「あ」
 電柱の陰に、黒い猫がいる。
 黒い毛の――
「あ――」
 それは。
 夜にまぎれこんだせいで黒く見えただけの、灰色の猫だった。私を睨みつけて、にゃあと低い声で鳴く。
「――」


 あの子が見つからない。
 どこからも、きぅんきぅんという、か細い声が聞こえてこない。


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