もののけ最前線!

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序。


 我が家のにゃんこ様は化け猫である。名前は番太郎という。
 昔、化け猫に関する物語を読んだことがあったが、確かその中には、「齢一〇〇歳を超え、体重は一〇キロを優に上回り、尻尾は二つないしそれ以上に割れており……」というような条件が記されていたと思う。成程、うちのお猫様は、元は真っ白かったのであろう毛をすっかり黄ばませた、とんだデブ猫である。そして完全に枝分かれこそしていないものの、尾っぽの先端に触れてみると、かすかにみょこっとした窪みがあるのだ……ついぐりぐりと撫で回し過ぎてしまい、手酷く噛まれてしまった。いってぇえ。……ああそうそう、襖を前足で開けるだけでなく、器用に後ろ足で閉めるようになったら要注意とも書かれていたなあ。もちのろんろん、うちのじじ猫様、そんなことは我が家に来た当初――つまり私が小学生の時分からニッツネチャメシゴトであった。
 あとは……そうだ、肝心な所か。人語を解し、操るというやつ。
『やい、久子』
 おやおや、噂をすれば何とやら。化け猫様がお呼びのようだ。可及的速やかに行ってやらねば、琥珀色の瞳に射竦められる――どころか、牙を立てられる恐れすらある。
 さてはて、今回は何が起こるのかねえ。


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