北九州

　北九州監禁殺人事件（北九州市小倉北区）
　福岡一家四人殺害事件（福岡市東区）
　大牟田四人殺害事件（福岡県大牟田市）
　佐世保小六女児同級生殺害事件（長崎県佐世保市）
　佐賀女性七人連続殺人事件（佐賀県北方町・白石町・北茂安町・武雄市）
　etc, etc.

　学校の屋上に寝転がって見る空は雲一つなく、ひどく、ひどく穏やかに青くて、いっそ現実味がなかった。
　確かに感じられるのは、握り合う手の温度だけ。
「どこかへ――逃げたい」
「どこへ？」
「ここじゃないなら、どこへでも」
　どちらともなく口にした言葉すら、乾いた空気を上滑りしていく。
　もう片方の手のひらを、太陽に。かざしてみても、何もない。
　何も変わらないのだ。
「でも――どこへでも、って言っても」
「なに？」
「北九州だけは、ごめんかな」
　二人でただ手を握り合う。体温を分け合うように。だけども握りしめるたび温度は変わって、同じ熱さになることは永遠にないように思われた。
　掲げた方の手を、ゆるやかに降ろす。
　空虚に言葉を綴っていく。
　あたたかくも冷たくもない空気を、ただ取り込んでは吐き出していく。
「きたきゅうしゅう……」
　視界を埋め尽くすのは、ああ、なんて、なんて、あおいそら――

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